第六部:生化学の基礎 脂質
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ここでは,生態系の物質代謝で重要な役割の一つであるクエン酸回路(TCA 回路)に関連し, 【クエン酸回路とは】, 【クエン酸回路での反応】 に項目を分けて紹介する。
クエン酸回路とは
 クエン酸回路( citric acid cycle )
 酸素呼吸する生物全般に見られる好気的代謝に関する最も重要な生化学反応回路で,TCA 回路( tricarboxylic acid cycle ),TCA サイクル,トリカルボン酸回路,クレブス回路( Krebs cycle )などと呼ばれる。なお,文献等での最も一般的な呼称は,TCA 回路である。
 クエン酸( TCA )回路は,ミトコンドリア内部のマトリックスにおいて,脂肪酸のβ酸化で生成するアセチル CoA ,及び解糖やアミノ酸の分解で得られるピルビン酸,ピルビン酸から生成するアセチル CoA が回路に組み,効率良くエネルギーを生産する経路である。
 TCA 回路では,エネルギーの生産と共に,アセチル CoA のアセチル基を酸化し,2 分子の二酸化炭素( CO2 )に変換,水素を還元型の補酵素の形( NADH2+ と FADH2 )で捕捉し,アミノ酸代謝,糖の代謝などの他の経路の仲立ちをする。

クエン酸回路( TCA 回路)
図出典:東京大学生命科学教育用画像集(2017年参照;現在はアクセス不可)・クエン酸回路
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クエン酸回路での反応
 次に示す反応では,反応物 (触媒)→ 生成物 で示す。
 なお,式中の  ACP は,アシルキャリアータンパク質を,NAD ,CoA ,FAD などは補酵素を,ADP ,ATP ,GDP ,GTP は,補酵素として働くヌクレオチドを示す。
 解糖系からのクエン酸の生成
      ピルビン酸 + CO2 + ATP(ピルビン酸カルボキシラーゼ)
     → オキザロ酢酸+ ADP + Pi
      ピルビン酸 + CoAHS + NAD+ (ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体)
     → アセチル CoA + NADH2+ + CO2
   (アルドール縮合)
      オキザロ酢酸 + アセチル CoA + H2O(クエン酸シンターゼ)
     → クエン酸 + HS-ACP
 クエン酸回路でのクエン酸の生成
 クエン酸回路は,上図で紹介したように,可逆反応である。ここでは,図のクエン酸を出発物質とした時計回りの反応経路を紹介する。
 cis-アコニット酸の生成(脱水反応)
      クエン酸(アコニット酸ヒドラターゼ)
     ⇔ cis-アコニット酸 + H2O
 イソクエン酸の生成(水和反応)
      cis-アコニット酸 + H2O(アコニット酸ヒドラターゼ)
     ⇔ イソクエン酸
 オキサロコハク酸( 2‐オキソグルタル酸)の生成(酸化反応)
      イソクエン酸 + NAD+ (イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)
     → オキサロコハク酸 + NADH2+ + CO2
 α-ケトグルタル酸の生成(脱炭酸反応)
      オキサロコハク酸(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)
     → α-ケトグルタル酸 + CO2
 スクシニル CoA の生成(酸化反応,脱炭酸反応)
      α-ケトグルタル酸 + NAD+ + SH-CoA(オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体)
     → スクシニル CoA + NADH2+ + CO2
 コハク酸の生成(リン酸化)
      スクシニル CoA + GDP + Pi(スクシニル CoA シンターゼ)
     ⇔ コハク酸 + GTP + SH-CoA
 フマル酸の生成(酸化反応)
      コハク酸 + FAD(コハク酸デヒドロゲナーゼ)
     ⇔ フマル酸 + FADH2
 L-リンゴ酸の生成(水和反応)
      フマル酸 + H2O(フマル酸ヒドラターゼ)
     ⇔ L-リンゴ酸
 オキサロ酢酸の生成(酸化反応)
      L-リンゴ酸 + NAD+ (リンゴ酸デヒドロゲナーゼ)
     ⇔ オキサロ酢酸 + NADH2+
 クエン酸の生成(アルドール縮合)
      オキザロ酢酸 + アセチル ACP + H2O(クエン酸シンターゼ)
     → クエン酸 + HS-ACP
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